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201710ディスビローター
ディストリビューターのローターアーム（ディスビローター）
穴の深さ：
- 左 約１４mm
- 右 約１７mm
ディストリビューターのローターアーム（略してディスビローター）の品質低下が著しいです。
解決策を得るべく2017年10月に訪英した結果、
品質の安定したものを確保できる目処が立ちました。
『ディスビローター』というのは、ディストリビューターのローターアームの略です。
・ディストリビューター → ディスビ
・ローターアーム → ローター
ディストリビューター（ディスビ）は、高圧電流を分配する機器一式（ASSY アッセンブリー）ですが、ここでは、ディスビを構成する部品の一つであるローターアーム（ローター）について説明しています。
以下、詳細を報告します。
◎▼◎。。◎▼◎。。◎▼◎。。
ローバーV8エンジン用ディストリビューターローター（STC1857）の品質低下が著しく、当店で得ている情報としては、最も短い寿命は、
・純正品 2,000km
・インターモーター製 200km
でだめになったとのことです。
走行中、いきなりエンジンが止まり、スターターモーターは回るがうんともすんとも言わない。ローター交換するとすぐにエンジンが掛かるようになった、という事例を何件もご報告いただいています。
当店ご利用者様からの情報によれば、黒色プラスチック部分が溶けているものもあった、とのことでした。
これ以外に、オールメークス（Allmakes）製も取り寄せられるのですが、非常に安価で、また同社の部品は全般的に品質があやしいのでこれまで取り扱ってきませんでした。
ただ、純正品もインターモーター製もだめということがわかってからは、仕方なく今年からオールメークス製も仕入れていますが、まだあまりご利用いただいていないので品質は不明です。（青森県のランドローバーに詳しいメカニック様によれば、クラシックレンジ バンプラ 4.27リットルがオールメークス製でとりあえず調子よく走っているとのことでした）
ランドローバー純正品は、過去のものには黒色プラスチック上面に LUCAS という文字が入っていたのですが、いつの間にか文字がなくなっています。
・・・今年にはいって、当店ホームページの写真を見た青森のランドローバーに詳しいメカニック様からお電話いただいて、気が付きました・・・うっかりしていました。
わかっている限りでは、昨年秋頃から仕入れたものから現在に至るまで、純正シールにはトルコ製と書かれています。
当店ご利用者様からのご連絡と、メカニック様、部品業者様との情報交換の結果わかったのは、どうやら、
・LUCAS 文字入りはOK。
・スペイン製もOK。（2013年前後はトラブル皆無なので）
・トルコ製がだめ。
のようです。
ところで、今年５月に JED ジョン・アールズ氏を訪問した際に、
ランドローバー純正品や社外品ローターの品質は悪いので、
これを使っている、これならOK、とのことで見せてもらったのが、
黒色プラスチック上面に
「DD」という文字が入ったものでした。
今回、それを製造・販売しているところを訪問してきました。
DD Distributor Doctor Ltd （DD）
http://www.distributordoctor.com/
マーティン・ジェイさん
この会社はルーカス製ディストリビューターの
・修理
・部品の状態のものを組み立てて販売
・ローターの制作・販売
を行っています。
ルーカス製のディストリビューターは現在、ルーカス社が供給終了しているのですが、数多くの旧車に使用されているため、なくてはならない部品です。そのため、事業として成立しているという訳です。
結果、わかったことは、
DDでは、ローバーV8用ディスビローターを２種類作って販売したが、不良品が見つかったので現在は販売停止しているとのことでした。
上の写真は、その場でサンプル品としてくださったものです。
見分け方としては、ディスビローターの下にある丸いカバーを取ってみて、
- ポイントがあるか それとも
- ピックアップ と ギザギザの８山の歯車「リラクター」があるか
でわかります。
２ドアレンジローバー（キャブレター）の場合は、元々は左側が使われていますが、修理の過程で右側を使うディスビに変更されている場合があります。
1989年以降の電子制御のクラシックレンジローバーの場合は、右側です。
不良の原因は、プラスチックの中に再生プラスチックが数％混入していたため、中に水分が含まれているためにリークを起こす、とのことでした。
それは、このことですかと、DDのホームページを印刷したものを持参して見せたところ、そうその通りです、との回答でした。
これがそれです。
DDのホームページより
http://www.distributordoctor.com/rotor_arms.html
上記のホームページでは、プラスチックにカーボンブラックが混ざっているために（導通してはいけないところが）導通してしまうために起きる不具合を記述しています。
これを解決するためにディストリビューター・ドクターでローターを製造したわけですが、プラスチックに水分が混ざっており同様に導通してしまう不具合がでた、ということでした。
現在、プラスチック材料を良くして製造中とのことです。
専門機関に分析依頼をした、よくわからないグラフや顕微鏡写真を見せてくれました。
この不良品のディスビローターは、新品から１ヶ月程度はOK、とのことでした。
現在、品質の良いものを製作中で、あと４〜５週間で出来上がるとのことでしたので、その場で予約してきました。
ところで、マーティン・ジェイさんに、この後JEDを訪問する予定ですと伝えたら、JEDはDDの顧客とのことで、電話を掛けてくれました。
電話の用件の一つは、日本から舘脇さんが今お見えになっていて、この後に御社を訪問する、という挨拶と、２点めとして、JEDに納品したディスビローターに不良品が見つかったため、現在、品質の良いものを作り直しているとのことを伝えていました。
JEDは驚いて、これまでDDのディスビローター不良は一度もない、と言っていました（電話をスピーカーで話してくれたので先方の声も聞こえた）。
この後、私がJEDに訪問した際にも念のためと思って、DDでは現在ディスビローターを販売停止していて、新しいものを作り直している旨を伝えたところ、ジョンさんと息子さんの二人とも驚いていました。
私が帰国後に、DDにお礼のメールを出した際に、
JED訪問時に、DDのディスビローターに不良品が見つかったので販売停止中と伝えたらJEDは驚いていました、これまでに１件もトラブルはないとのことでした、
と伝えたところ、返信としては、
そうかもしれないが、わずかでも実際にトラブルがあったので販売停止している、新しいものが出来上がり次第お送りします、
との回答でした。
それだけ品質に厳しく対応していることがわかり、非常に安心しています。
ディストリビューター・ドクターのマーティン・ジェイさん
プラスチックのトレイに小分けされているのは
ディストリビューター内にある遠心進角のコイルばね。
右端の赤い機械がディストリビューターの測定機器
この測定機器にディストリビューターをセットして、
実際にシャフトを回転させて各種データーを取得し、グラフを作成する。
ディストリビューターを組み立て後に１個づつ実施して、カルテとして保存していました。
ローバーV8用ディストリビューターのハウジング部分の新品
在庫
修理の受注品
たしかこれが、世界に２台しかないアストン・マーチンの試作車のディストリビューター。
なお、伝票の中には、イギリスの老舗（しにせ）ランドローバー専門店の名前もありました。
シリーズもの４気筒用のディストリビューターでした。
このお店に訪問したことがありますし、◯◯さんには大変お世話になりました、という話しをしたら、おおそうかそうか、と頷いて喜んで聞いてくださいました。
カルテ。
修理したディストリビューターはひとつづつベンチテストに掛けて、
データーを計測して保管している。
カルテにはグラフが描かれている。
ルーカスの技術書類
ルーカスの技術書類を参照する若手スタッフ
このスタッフさんのクルマが社屋前に停まっていて、BMW。
４点式シートベルトが付いていますねと指摘したら喜ばれました。
点検口付きのディスビキャップ
ディスビキャップ内側中央の凸とローターとの接触を確認するために横穴をあけています。
現在販売中のDD製レッドローター
ルーカス製ディスビローターをルーカス社は供給終了しているため、DD社で作っているわけですが、現在は５，６種類製造販売中で、その一つがこれ。
ローバーV8用ローターはあと１ヶ月程度で完成予定。
予約済みにつき入荷が楽しみです（^_^）
持ち込まれたディスビを洗浄するブラスト機械
社屋内が汚れないようにこの部屋にはしっかりしたドアがありました。
ところで、訪問してご挨拶の後、
まずはこちらをということで案内されたのが、
マーティン・ジェイさんの旧車コレクションでした（^_^）
最近手に入れたのは、ELVA（エルヴァ）というマシンでした。
実は、ELVAという名前はその時に初めて知って、訪問後にグーグル検索して調べました。世界的にかなり貴重なようです。
ELVAのシャシ
ELVAのディストリビューターには、ポイントが３つありました。
マグネシウム製ホイール
手に取らさせていただだきましたが、ものすごく軽かったです。
ボディカウル
アウディの３気筒エンジン
ELVAのコーションプレート
ELVAのコーションプレート
トライアンフ
マーティン・ジェイさんは古いクルマがお好きのようで、その場に旧車が５、６台並んでいました。
私には知識がなく、マーティンさんをあまり喜ばせることができなかったかと思うと申し訳なかったです。
出勤しているスタッフさん全員にご挨拶させていただきましたが、そのうちの一人の男性は、ランドローバーシリーズものが好きで、シリーズ１、シリーズ２を持っているとのことでした。
同社は、マーティンさんご本人、奥様（外出中）、スタッフさん（うち２、３名はお休みと病気療養中）の合計７人位いらっしゃるとのことでした。
マーティンさんとの会話中も様子をうかがっている限りでは、みなさんテキパキとした身のこなしで、イギリス病といわれたチンタラ働く現場労働者という姿はここでも皆無でしたし、全体的に明るい雰囲気でした。
また、古いクルマに使われているディストリビューターの修理・ローター販売でこれだけの人数を雇用しているというのが、驚きであり、羨ましくもありました。
ご報告は以上となります。
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